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学長 森田 潔からのメッセージ

国際的な研究・教育拠点としての「美しい学都」を目指して <森田ビジョン>

  1. はじめに
  2. 継承と発展
  3. 担い手の形成
  4. 活動理念
  5. キャンパスの創造
  6. 大学のガバナンス
  7. 結び
国立大学法人岡山大学長 森田潔
 国立大学法人岡山大学長
森田 潔

1.はじめに

 私は2011年の4月1日より、学長の職に就任いたしました。自分の任期中に実現したいことを学内外の方々に提示するため、その思いを森田ビジョンという形で公表したいと思います。

2.継承と発展

 私が掲げる岡山大学像は、以下の言葉に集約されます。

 国際的な研究・教育拠点としての「美しい学都」

 私は、先代の学長の掲げた「学都・岡山大学」の構想をより一層深化させるためにこの「学都の構想」を、都市・地域と大学との協力という形で具体化し発展させなければならないと考えます。
 学都は、大学だけの力に依って達成されるものではなく、大学が置かれている都市・地域とともに達成されるという視点を明確にすべきであると考えるからであります。世界の多くの優れた知性を惹きつける大学は、大学らしい美しいたたずまいの都市に在ったことは、これまでの欧米の優れた大学の歴史と現実から明らかなことです。岡山大学が、真に国際的な学術拠点として浮上するために、私はこの大学と都市・地域が連繋した新たな「美しい学都」の創設を掲げていきたいと考えます。

3.担い手の形成

 この「美しい学都」を担う岡山大学には、優れた学生、教員、医療専門家の集団が強固に、かつ持続的に形成されなければなりません。以下、教育、研究、病院に分けて、私のビジョンを明らかにします。

教育
1.誇るべき伝統を生かした豊かな教養の涵養

 岡山大学の母体である旧制岡山医科大学、旧制第六高等学校、岡山師範学校、岡山農業専門学校等の誇るべき歴史に学ぶとともに、岡山大学が有する社会文化科学、自然科学、生命科学、医療、環境学、教育学の各分野における優れた知力と伝統を生かしながら、豊かな教養と普遍的知性、科学的な思考をもつ学生を育てます。

2.豊かで高度な専門的知識を有する学士、修士、博士の養成

 岡山大学の総合大学院制度を活かして、学際・融合的な教育・研究を推し進めるとともに、それぞれの学問分野における学部と研究科の目的と役割分担を明確化し、学士、修士、博士の各段階において「知の創成と知の継承」を担う豊かで高度な専門知識を有する人材を養成します。

3.気概ある人材の養成

 私は今日の教育に最も必要なものとして気概の養成を挙げたいと思います。どれほど豊かな教養と優れた専門知識があっても、それらの知識を自分の成長と社会、人類の発展に積極的に用いようとする気概がなければ、それらの知識は、無意味なものとなり、また困難な現実を打破することもできないでしょう。私は、この気概の養成という教育課題を、地域社会の現実に大学が真剣に向き合うなかで達成したいと考えています。

研究
1.世界水準の研究の推進と発信

 大学に結集する研究者は、常に自らの研究が世界的に独創的なものであることを使命としています。またそれでこそ、世界の知性と優れた留学生を岡山大学に惹きつけることができます。それゆえ私は、岡山大学の研究者の個人と集団が、グローバルに展開する学術分野において、世界レベルでの研究業績を生み出し、岡山大学が世界的な研究拠点として、世界の知のコミュニケーション・センターの地位を達成することを力の限り支援します。

2.総合大学院を活かした高度な異分野融合型研究の推進

 総合大学および総合大学院制という岡山大学の特長を活かしながら、様々な学術分野における基礎研究の質と蓄積を高めるともに、人類社会の持続的進化に貢献するグリーン・イノベーションやライフ・イノベーションを牽引していく異分野融合型の先端的研究を推進します。

病院
1.地域医療の充実

 岡山大学病院は「高度な医療をやさしく提供し、優れた医療人を育てます。」を基本理念とし、明治3年の岡山藩医学館の開設以来、140年間にわたり、岡山県はもとより中国・四国地方の地域医療に携わってきました。各診療科の高度な医療能力はあらゆる疾患に対応でき、まさに地域における「最後の砦」病院の機能を提供しています。大学病院はその機能をさらに発揮するために良き医療人を育成し、地域医療機関や行政との連携を強化して地域医療の充実を推進します。

2.先進的医療設備の拡充

 岡山大学病院は先人たちの努力の基盤のもとに臓器移植、小児心臓外科、幹細胞移植など全国でも最も進んだ高度先進医療が提供できる施設の1つであると言えます。しかし、絶え間ない新しい医療の開発と創造力豊かな医療人の育成が求められており、新医療研究開発センター等における橋渡し研究の推進と先進的医療施設及び設備の整備が必要不可欠です。大学病院もソフト・ハードを兼ね備えた「美しい学都」構想の一翼を担うことを目指します。

真の国際化を目指す

 岡山大学が真に国際的な研究教育の拠点になるには、今日までの達成は極めて不十分であります。大学の国際化の根源は、大学人の知性が真に普遍性を持つというところから来ています。優れた知性は自らの仲間を求めて世界を駆け巡り、知性への渇望は世界の優れた知性の扉を叩く。そうした視点からみれば、岡山大学の現在の水準は、憂うべき状況にあると言わざるをえません。私は、今後、岡山大学を世界に向けて開放し、教員、学生、職員、大学の構成員を可能な限り世界に派遣し、高度な国際化対応能力を身に付けさせ、さらに世界から可能な限り優れた知性、学生、研究者を岡山大学に呼び込み、岡山大学を世界に向けて創造的な知の成果を発信する大学にしたいと思います。
 また世界的な大学ランキングの位置において、岡山大学にふさわしい国際的評価を獲得することは重要なことと考えており、ランキング向上のために適切な対応を取るつもりです。

4.活動の理念

 学都形成のもうひとつの鍵は、大学人が地域の人々と連携し、地域の人々が世界の人々と連帯するという活動理念を持つことと考えます。「学都 岡山大学」ではなく、「学都 岡山」であります。
 これまで、多くの国立大学は、その人材養成の理念を国家・社会に有為な人材を提供することに重点を置き、一部の領域、医療や地域教育を除けば、大学は地域や地元の都市に深い連繋意識を持ってこなかったと思われます。私は、中央志向でない、地域が自立する事に貢献する大学を作りたいと考えています。地域の人と連携しつつ、地域の善き頭脳となり、地域のための優れた人材養成の場となり、知的に高度な地域サービスを提供する大学を作りたいと考えています。この方向は、大学を地方に埋没させるものではありません。岡山大学を国際的なネットワークの中で、人文社会、環境、自然、医療の分野を包含した国際的なリージョナル・センターを持つ大学に押し上げ、そこから岡山大学を真に個性的な、卓越した大学に作り上げていくことが必要であると考えます。岡山の地にあってこそ世界から人が集まり、世界に輝く大学を作りたいと思います。

5.キャンパスの創造

 国際的な美しい学都の創成には、大学のキャンパス自体が、内外に広く開かれた美しいキャンパスでなければなりません。欧米の優れた大学が自らのキャンパスの美化に多大な関心を有しているのも、知の創造の場には、それにふさわしい落ち着きと大学にふさわしい品と美の環境が必要不可欠と考えてきたからです。
 幸い、岡山大学は、都市の中心に、交通に便利な病院・キャンパスと緑陰豊かな座主川を有した大きなキャンパスと倉敷美観地区の研究所を有しております。優れた美しい、品あるキャンパス創成の可能性は充分に備わっています。さらには、一般市民の多く集まる街中での新キャンパス創造も実現したいと思います。
 美しい、気品のあるキャンパスの創成には、優れた想像力を持った専門家にその設計を託し、時間をかけて計画的に進めることが必要であり、そのようにしたいと思います。
 津島キャンパスと鹿田キャンパスの2つの大きなキャンパスの大学人が、学都づくりの中で互いに協力しあい、ともに岡山大学の構成員としての連帯感を抱けるようにしたいと考えています。
 今日の日から、すべての公的な文書から「津島」「鹿田」という言葉を削除していくことを提案したいと思います。我々は同じ美しい「岡山キャンパス」の同一住人であり、一蓮托生、同じ船に乗る乗組員であります。

6.大学のガバナンス

 大学の組織は、一定数の教員からなる自立的単位、すなわち学部や研究科から成る統合組織が、入れ子構造をなして大学を構成しています。すなわち、個人は自由な発想に基づく活動を保障されながら、分野、研究室を構成し、一定の自立性を持った分野が部局を構成し、さらに部局が全体の教育研究理念のもとに大学を構成します。
 大学全体に責任を負う執行部・役員会は、国やその他の機関からの要請を受けつつ、自立的に自らの方針を決定し、大学全体の統合を図っていきます。
 このような縦の組織に、さらにこの組織構造を横につなぐのが全学センターであり、大学全体にかかわる共通に果たすべき機能を担っています。したがって大学センターは固有のミッションを持って活動し、それにふさわしい検証システムを持つことが必要です。
 縦と横からなる、このような自立的な大学組織が機能を十全に発揮するためには、その単位、単位の意見の尊重と自立的活動の保証、それをつなぐ情報交換を活発にしなければなりません。部局およびセンターの中枢は、大学運営のMiddle層を構成しており、自ら、Middle up, Middle downの意志疎通の体制を作り上げることが極めて重要であると考えます。岡山大学のような巨大な組織を活性化するには、個人の自由闊達な活動と、それを組織化するMiddle層の力が何より重要であり、そのMiddleから信頼されるに足りる大学執行部の存在が必要であります。

7.結び

 最後に、この森田ビジョンの締めくくりとして、3つのことを申し上げます。
 第1は、この岡山という地域、岡山大学という大学が、実に恵まれた状況にあるということです。岡山という地域が風光明媚、好天に恵まれた、安全・安心の地であり、私たちの大学がそうした地域の中心に在るということに改めて思いを致し、自らの責務を自覚すべきであると考えます。
 第2に、地方に在りながら岡山大学の規模は、他の大都市の大学と比べても遜色のない総合大学としての陣容を持っていること、そして輝く伝統も先輩から受け継いでいること、これらは、これからの岡山大学の発展にとっておおきな財産であります。
 第3に、時代が岡山大学に期待をし、微笑みかけているという予感がするということです。大学が法人化された今、チャンスは我々の手の中にあります。そしてどの立場に在る人も、地方分権、地域主権等を語り、時代の目指す方向が地域の自立であることを多くの人が感じていることは確かです。私が森田ビジョンで申し上げてきたことは、明らかに時代の要請に適っていることを確信します。
 岡山の地にあって「世界中から人が集まる、日本を代表する独自な総合大学、知と地の創造、美しい学都・岡山大学」を作っていこうではありませんか。